「木洩れ日に泳ぐ魚」(恩田陸) -本当に面白い小説を探す-【解説-意味とネタバレ】
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ハドソン
こんにちは、ハドソンです。

文句なしの★5でした!! 「木洩れ日に泳ぐ魚」を読みました!!

店頭に並んでいたので手に取ってみたんですが、もう面白くて面白くて...2時間かかりませんでしたね。

 

 

あらすじ

 

あるアパートに同居する男女。明日からはアパートを出て別々の人生を歩む。今夜は最後の夜である。

 

最初、読者には多くが明かされない。

その為、カップルが別離するストーリーかと思わされる。

しかし、読み進めていくと、そのやりとりには違和感を感じる。

ストーリーは男と女、それぞれの視点から交互に語られる。

 

そして、最初の章の最後で、男はこう考えていることがわかる。

僕は彼女に白状させなければならない。(中略)
できるだろうか。彼女があの男を殺したのだと、彼女の口から、今夜中に。

 

ここからはもうページをめくる手が止まらない。

そして、めくる度に明かされる事実

触発されてさらに読み進める。一気読み必至の新感覚ミステリーである。

 

そして辿り着いた真実と、それについての2人の心境もまた、見事に描写されていて圧巻である。

 

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みどころ

 

みどころは2つある。

 

謎、解き明かしまくり

 

序盤からとにかくサクサク読み進めることができ、終盤までドキドキ感が止むことがない。

 

とにかく、この小説は謎が多い。

男女の関係性、「あの男」との関係性、過去の記憶、冒頭で登場する写真の意味...などなど

 

そして、最終的に辿り着く真実とは?

 

終盤で見えてくる景色

 

物語の最初と最後では、どちらにも共通の1枚の写真が登場する。

しかし、その写真の持つ意味は、前半と後半で全く違う。

 

もし後半がいまいち面白くない、と感じるなら、読み込みが足りないのかも。

間違いなく後半も面白かった。

 

全ての真実が明らかになった後の、男女の心境の変化がそこに現れる。
一夜の心理戦を乗り越え、朝日を迎えた2人は、真実をどう捉えるのか。

 

おすすめの読み方

 

前半はサクサク、ハラハラで読む。

 

だけど、後半は心情を描写する場面が多くなる。

真実が明らかになって、ヒロ、アキの心情がどのように移ろうのか。

 

恋愛観、死生観にも注目して、じっくりと意味を考える時間が訪れる。

 

 

感想(ネタバレあり)

 

マルコ

まだ読んでない人は絶対に読まないでください。

 

波乱の展開に感嘆

 

これは半端ない小説だ笑

 

何度もいうようにサクサク、そしてドキドキしながら読み続けた。

 

[box class="pink_box" title=""]二人が互いに、相手が犯人だと思っていること。
二人は実は兄弟であること。
父親が自分たちの正体に気づいていたかもしれないこと。
そして、二人は兄弟ではなかったこと。[/box]

 

矢継ぎ早に明かされる真実に驚いてばかり。
「木洩れ日に泳ぐ魚」というタイトルを聞いた時には、味気ないタイトルだと思っていたのに笑

 

「木洩れ日に泳ぐ魚」の意味 その1

 

ここからは、類推の域を出ない。

文庫本でいうと105ページ(10章の始め)

彼の目が宙を泳ぐ時、私はいつも木洩れ日が揺れるのを見る。
ちらちらと揺らめく光の中を、私たちが言葉にせずに押し殺してきた感情と欲望の欠片が、一瞬影のように横切っていく。
木洩れ日の下には、深い淵があって、濃い緑色の水の底に多くの魚たちが蠢いている。
魚たちは時折水面近くまで上がってきて尾びれを翻したりするが、いったいどれくらいの魚が棲んでいるのか、
彼らがどんな姿をしているのか見ることはできない。

 

つまり、

[box class="glay_box" title=""]木洩れ日に泳ぐ魚
= 私たちが言葉にせずに押し殺してきた感情と欲望の欠片
= 多くの魚たち[/box]

 

であって、
その「感情と欲望の欠片」は

木漏れ日が揺れているせいで、どれくらいあって、どんなものなのか分からない。

と述べられている。

そして、木洩れ日に関係する表現はこの後にも登場するのだが...

 

「木洩れ日に泳ぐ魚」の意味 その2

 

さらに後半になるにつれ、こういった記述がある(284ページ、26章)。

やがて、その光は木洩れ日になった。
緑濃い山の中を進む三人の姿が見える。木洩れ日を浴びて、いっしんに山道を歩く疑似家族の私たちが。

これはどういう意味だろうか?

 

三人というのは、文脈からしてアキ、ヒロ、そしてヒロの父親だ。

先ほどの「魚」とは関係ないようにも思えるが、「緑濃い」というワードが、前述の「濃い緑色の水の底」と類似している。

 

ひょっとして、前に出てきた「水の底の魚」は、「感情と欲望の欠片」だと思っていたが、それは違っていて、「森を進む三人」を表していた可能性がある。もしくは、その両方という捉え方もあるが。

 

しかし、ここでの「木洩れ日」は水の中を見辛くするものではなく、むしろ三人を明るく照らしてくれるものと解釈できる。

 

そう、この文章に来るまでは、「木洩れ日のせいで水の中 = 真実 を見ることが出来ない」と捉えていたのに対し、
この文章では「真実というものはさておいて、木洩れ日が私たちを明るく照らしてくれる」と捉えている
ように見える。

 

このことは、「最後の夜を語り明かし、真実というものが見えた挙句、朝を迎えた」ということに似ている。
また、「本当に好きではないと分かっていながら、リップサービスを重ねる2人」にも通じるところがあるかもしれない。

 

「木洩れ日に泳ぐ魚」の意味 その3

 

そして、本当の最後の2ページ。実はここがこの小説の一番面白いところではないだろうか?

 

アキは部屋を見上げる。そして、その部屋に

もうひとりの彼と、もうひとりの私が、何も知らずに、無邪気な別の歳月をあの部屋で送っているような。

気がしてくる。

 

そしてそのあとに、

開け放たれた窓。

再び、どこかに木洩れ日の光を見たような気がした。

 

これは、どういうことかというと、

アキは、まるで自分が写真の中にいるかのような錯覚を起こしているのだ。

アキ、ヒロ、ヒロの父親の三人で、窓 = 写真の枠を見上げているかのような錯覚を。
そして、それを「もうひとりの彼と、もうひとりの私」が「喜劇」として見ているんじゃないか。と。

 

恋愛観・哲学観も見逃せない

 

私が一番印象に残ったのは次の一節(269ページ、25章)。

好きということの達成感を得るのに、互いの死くらい明確なものはない。
それぞれの命をもって子孫を残すことを否定するのだから。

 

アキは何をいっているのだろうか。

「好き」という時に、「それが子孫を残すためではなく、純粋に相手のことを愛している」と証明するのは難しい。
もし、本当に好きであれば、お互いの為に命を切り捨てることで、それが証明されるだろう、ということ。

 

まあ、私は100%同意し兼ねるが、1つの意見として面白いものだと思う。

 

[box class="glay_box" title=""]

私がこれに同意しないのは、そもそも人間の「好き」という感情
「生きていくのに有利な場合と、子孫を残すのに有利な場合に生まれる感情」であると考えているからだ。
何が言いたいかというと、そういう風に遺伝子的にプログラムされているのであって、
そもそも「純粋に好き」なんてものはないのだ。最初から、遺伝子的に、打算の感情なのである。

ま、そんな風にドライな解釈をしてもしょうがないけど、あくまで論理的にはそうなんだろうな、と。[/box]

 

総評

 

ハドソン
それにしても面白かった。総評は....

★★★★★

ホシ5!!

何が素晴らしいって、ドキドキ感からの、じっくり考えさせられるっていう満足感です。

 

 

マルコ
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